オールドファッション

千葉出身。大学院修士をへて今は新入社員。自分が思う天才がつくる音楽とゴールデンレトリバーがすき。

私がなりたい人

 私がなりたい人は、3年前オーストラリアのシドニーに留学をした時の、ホストマザーのような人である。彼女は当時74歳であったが、留学生の受け入れは初めてで、あまり英語が上手くない私を受け入れ、実の孫のように可愛がってくれた。また、様々な場所に連れて行ってくれた。彼女はいつでも笑顔を絶やさず、そしてどんな人に対してもフレンドリーで、真摯に向き合う誠実さがある。

 去年、ホストマザーとホストファザーが、日本に旅行に来た。京都を廻るツアーに、私も参加させてくれた。伏見稲荷大社の山登りの際、ホストマザーはご高齢ということもあり山登りを辞退し、私とホストファザーで登ることになった。山を登っていて、麓でホストマザーが腕に抱えていた彼女の上着を私が代わりに持ち、それを返し忘れていたことに気づいた。山登りの最中、突然気温が低くなり、麓で待つホストマザーが心配になった。上着を返し忘れてしまったことの罪悪感が募った。

 麓に戻り、真っ先に上着を渡した。そして拙い英語でも一生懸命謝り、心配したことを伝えた。ホストマザーは私のその姿を見て、私の気持ちを汲み取るように、「ホナミ、全然気にしなくていいのよ」と言ってくれた。私はその言葉を聞いて、彼女の優しさに涙が出そうになった。

 その後も、ホストマザーはお土産屋で私の分のソフトクリームを買ってきてくれたり、突然のツアー参加で夕食が用意されなかった私に気を遣い、「ホナミ、食べて」と夕食を分けてくれた。その姿は、私にとって実の祖母同然であり、また実の祖母と同じくらいの愛情と親しみを抱いている。国境も言葉も関係なく、人間は心を通わすことができると、彼女から学んだ。

 私もホストマザーのように、太陽のように明るく人を照らし、心の広い人間になりたい。また、彼女のように何歳になっても自分の「やりたいこと」を制限せず、新しい経験そして出会いを求めて生きていきたい。ホストマザーに出会えて、私は歳を取ることが怖くなくなった。いつだって「今」を楽しみ、誠実に物事、そして人と向き合っていれば、きっと彼女のように輝くことができると信じている。